精密機械へのこだわり、ラウンドコレクション
Brandear
人気ブランド「FRANCK MULLER(フランクミュラー)」の腕時計【ラウンド】の人気の秘密や豆知識などブランディアならではの視点でご紹介させていただきます。
FRANCK MULLER(フランクミュラー)腕時計の二面性
- フランク・ミュラーはスイス人の厳格な父から精密機械に対する勤勉さと、イタリア人の母から芸術を愛する気持ちを受け継いだということです。そうした彼の性質は、フランクミュラーの腕時計によく現れています。
- たとえば「エテルニタス」や「ギガトゥールビヨン」は機械技術を極めた作品と言えるでしょうし、その一方、「カサブランカ」や「ハートトゥハート」は商品コンセプトの物語性やデザインを重視したロマンあふれる作品と言えます。ざっくり分けると、レディース向けの腕時計にはファッション性や見た目の美しさを重視したクォーツ式ムーブメントの商品が多く、メンズ向けの腕時計には機能性や複雑時計の面白さを追求した機械式時計が多いようです。
- けれどもフランクミュラーは、レディース向けにも「レディ トゥールビヨン」のように硬派な手巻き式モデルを作っていますし、メンズ向けにも「ヴァンガード ヨッティング」のようにレジャー気分が上がるようなデザイン重視の時計を作っているので、一概には言えません。
- ケースに関する傾向を言うならば、フランクミュラーは、トノウ・カーベックス型のケースには節操なくどんな型式のムーブメントでも載せて商品にしてしまうようですが、それとは逆に、ラウンド型のケースでは、ほとんど機械式時計の魅力を打ち出した商品だけを展開しているように見受けられます。
- 「トゥールビヨン ミニッツリピーター」や「スプリットセコンド クロノグラフ トゥールビヨン」など初期の実験的な作品の多くはラウンド型のケースで作られています。ラウンド型のコレクションは、美しくも真面目な外観の商品ばかりで、「ヴェガス」や「ヴァンガード」のように遊びの要素が強く押し出されたモデルやデザイン重視のモデルは見られません。「ラウンド ビーレトロ クロノグラフ」「ラウンド パーペチュアルカレンダー ビーレトログラード クロノグラフ」「ラウンド トゥールビヨン」などなど、フランクミュラーの複雑時計の歴史を物語るかのように機械技術的な特徴を主な魅力とするモデルがほとんどなのです。
記念碑的名作「ラウンド ダブルフェイス クロノグラフ」
「ラウンド ダブルフェイス クロノグラフ」(型番7000DF)は、フランクミュラーの初期の名作と言われています。
1991年に発表されたこの腕時計は、表側はストップウォッチ機能の付いたクロノグラフ、裏側は「パルスメーター(医療用の脈拍計)」「テレメーター(航空機などの距離計)」「タキメーター(自動車レースなどの速度計)」の3つの機能を備えたダブルフェイスの時計で、多機能性と複雑時計の魅力を同時に備えています。表裏両面に別個の機能を備えた複雑時計というだけでも驚異的ですが、本来別々の機器で計測される三種の計測器を一つの腕時計に収めているという意味でも前代未聞の作品でした。
ラウンドケースは伝統的な時計に採用されてきたものであり、伝説的な天才時計師ブレゲの時計に採用されたブレゲ針がこの時計にも用いられています。その一方、ベゼル部分のグレコローマン様式の円柱の土台を思わせるデザインはフランクミュラー独自のもので、複雑時計の設計にも優美さを添えることを忘れない芸術性の一端が伺えます。
興味深いことに、このモデルは発表当初、ローマ神話の神の名から「Janus(ヤヌス)」と名付けられていました。ヤヌスは頭の前後に反対向きの2つの顔を持つ双面神で、門の守護神であると同時に物事の始まりの神でもあります。このことからも「ラウンド ダブルフェイス クロノグラフ」は、ゲルマン人気質とラテン人気質を併せ持つフランク・ミュラーの、時計メーカー草創期の商品として象徴的な意味を持つものだったものと思われます。
なお、2015年に、7000DFの新装復刻版とも言うべきモデル(型番7000CCDFCANJ)がピンクゴールド、ホワイトゴールド各50本限定で発売されています。ケースとベルトをつなぐラグの部分にデザインの変更が加わり、アールデコを模した芸術的な完成度の高いモデルとなっています。